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2012/05/14

心房細動とイグザレルト

いよいよワーファリンに代わる薬、イグザレルトがバイエルより本格発売となりました。私は基本的に新薬には飛びつきません、むしろ1年間吟味してから使うタイプです。しかし、今回は違います。積極的に使っています。
心源性脳塞栓は、最も予後不良または重篤な後遺症となる疾患です。患者さんアンケートで「最もなりたくない疾患 第1位」は脳梗塞です。しかし、残念ながら十分な抗凝固療法がおこなわれているのはわずか40%とされています。(PT-INR2.0-3.0の至適治療域) やはりワーファリンは問題の多い薬です。
1:薬剤相互作用が多く、食物との相互作用も多い
2:Dose調整が面倒。体重、年齢、性別で「大まかな」予測すらつけることがしばしば困難である
3:場合によっては5mgあるいは8mgという大量の小粒を飲まねばならない
4:初期導入は最低週1回、場合によっては2回のPT採血が必要となる。外来で採血の待ち時間は患者にとって最も苦痛な時間とされる。また、調整には約1カ月を要し、その間のStroke発生リスクもある。さらに、その後もDose調整が必要となる。
5:ちょっとした右心不全の悪化で一気に効果が増強することがある。
6:K2Nを拮抗目的で使用しても、出血傾向があるときはなかなか効力を発揮せず、結局6時間程度かけて何度もPTを採血しつつ複数のアンプルをIVしなければならないことが多い。というものです。そのため、開業医さんへの逆紹介も受けていただけないことが多々ありました。

イグザレルトの前にプラザキサというものがありました。しかしこの薬には欠点があります
1:カプセルなので飲みにくい。脱カプセルができないため、PEGの患者さん、嚥下障害の患者さんには使用できない。
2:出血性合併症がワーファリンに比べ「非劣勢」であった
3:生体使用率が約6%と少ない
4:1日2回の内服が必要であり、ホームヘルパーが1日1回の訪問の場合、飲めないことがある
5:効果のメルクマールがない(最近になりAPTTが、と言われるようになりましたが??)

そこで、イグザレルトです。
1:あくまでCCR、年齢(75歳以上)に応じたDose調整
2:10mgまたは15mgの1日1回、1錠の服用という安定性
3:拮抗薬はないが4時間から6時間で効果が減弱するとされる
4:食物の相互作用なし
5:消化管出血、脳出血は治療域(INR2.0-3.0)のワーファリン群に比べて約50%である。
6:最終服用から24時間経過すれば、内視鏡処置も含めた手技・処置が可能とされる。すなわちヘパリン置換の必要性がかなり減少する。また再開も1T内服直後から効果を発揮する。不安な場合はPT-INRがメルクマールとなる。
7:欠点はすこし高価であることと現状で14日処方しかできないこと。適用はLoanAfのみであり、弁膜症合併症例、肺塞栓、DVTなどへの適用はまだない。(適用についてはプラザキサと同じ)

という状況です。やはりイグザレルトが使える患者さんには使いたいものです。自分でも自分の家族でも、必要な場合はイグザレルトを使うと思います。

1 件のコメント:

  1. 使用患者さんは着実に増えています。
    ただ、食思不振、脱水などをきっかけとしてすこしeGFR(近似値)があがると一気に腎障害がすすむことがあるようです。やはり2週間おきのフォローはしばらく必要ということで間違いなさそうです。

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