PPIガイドワイヤーについて
2012.12.06
Ver.1.2.0
冠動脈用ワイヤーとの違い。
基本的に冠動脈ワイヤーは最新のもの、末梢ワイヤーはそれらの名前を変えるあるいは一部リフォームしたものとされている。しかし、実際にはおおきく違う。冠動脈と比較して、末梢動脈病変は
1:対象となる血管径が多岐にわたる。Iliac、SFA、BKAでは血管壁の構造から血流量、狭窄が生じた場合のジェットなど、それぞれ部位別に使い分ける必要がある。
2:ガイディングシースから治療対象となる病変までの距離が遠いことが多い。
3:冠動脈は屈曲(ガイディング出口、LAD、LCX、RCA近位など)から病変までの距離はあっても数センチだが、末梢の場合、屈曲からその先の治療対象病変までの距離が極端な場合、山越アプローチでBKAを治療しようとすると、システムによっては30cm以上となることもある。さらに、複数箇所の屈曲がある場合はそれぞれにトルクコントロールを失わされてしまう。
4:Spotな病変であれば、誰でも治療が行えるが、Diffuseな病変、BKAのCTOなどは非常に、非常に距離が長く、その狭窄自体により、ワイヤーがトラップされる。透析の石灰化などは、ワイヤーも当然ながらマイクロカテーテルも少し無理をすると、ちぎれてしまうことがある。
これらを踏まえると、末梢ワイヤーには冠動脈用のワイヤーに求められる性能以外に、さらに、しっかりとしたシャフト構造、トルクコントロール、ワイヤーボディー自体のコーティング性能、先端のコイルの充填密度、チップの強度、テーパーのかけ方、と別の性能が要求される。もっとも、冠動脈用のワイヤーにはしなやかさをもったトルクコントロールとスタビリティーが必要であり、それらを追求したSION BLUEなどは、冠動脈とBKAの治療を同時に行った際、つかってみたところ、すばらしいものであった。しかし、前述のとおり、シャフトが末梢用としては弱すぎるため物足りない印象も否めなかった。
カネカ
Ruby Soft:コイルワイヤー、先端1.5g、ノンテーパー。コイルワイヤーのFirstとして用いる。ただ、シャフト合成は少し弱い。
Ruby Hard:コイルワイヤー、先端9g、ノンテーパー。BKAのTotalに対してはCruiseの次に使うことが多い。先端部分のコーティングが適度であることと、感触がわかりやすいのがよい。
Ruby Superhard:コイルワイヤー、先端18g、ノンテーパー。BKAのTotalに対するセカンドワイヤーとして使うこともあるが、IliacやSFAのTotalに対しても使いやすい。RubyはHard、SuperhardともにTreasureに比べ、先端形状の形成を行いやすいのみならず、へたりも少ない非常によいワイヤーである。冠動脈用のMagicシリーズと似た構造。先端が固くてちょっとヌル、そして非常に強い。手元に感触が伝わるのが非常にうれしい。
日本ライフライン
Athlete WizardPV1g:先端1g、テーパー構造。テーパーワイヤーが得意な日本ライフラインのワイヤー。冠動脈ではWizard78というものもあるが、こちらは009のテーパー。
AthleteWizardPV3g:先端3g、テーパー構造。少し構造が古いためか、トルクスタビリテリーは伝わりやすいものの、どうしてもChevalierに比べると、先端がへたりやすく、「一世代前のワイヤ−」と感じてしまう。
朝日インテック
Neo’s Cruise:プラスチックコーティングワイヤー。石灰化を伴ったTightLesion、トランスコラテラルアプローチ、BKAにおいては、ProminentNEOとペアを組んだ先端0.5mmのマイクロナックル、足関節以遠でPedalArchやDorsalArchを通過させる際、血管走行に追従した形状をとる。活躍の幅が最も広いワイヤーのひとつ。冠動脈のFielderFCと先端はよく似ているが、シャフトは末梢血管に対応するため、固めに作られている。とにかくまずはCruise!というレベルのファーストワイヤーとして使っている。
Neo’s Treasure:0.018コイルワイヤー、先端12g、ノンテーパー。昔からあるIliac-SFA領域のワイヤー。0.018なりの先端形成、形状記憶であるが、トルクスタビリティーも高く、よいワイヤーである。しかし、後述するRubyなどの登場により徐々に活躍の場は狭まってきている。0.016であるため、Prominent(0.014対応)の中を通る。
Neo’s TreasureXS:コイルワイヤー、先端12g、ノンテーパー。Treasureの0.014版。以前はスタンダードワイヤーであったが、最近は先端のへたらなさ、シェイピングのやりやすさからRubyHardを使うことが多い。
Neo’s Treasure:上記Treasureの0.014版。スタンダードワイヤーで評価基準となっていたが、最近RubySoftに世代交代しつつある。
Neo’s AstatoXS9-12:コイルワイヤー、先端12g、テーパー。冠動脈のConquestPro12と同じ構造。DistalCapを突き破るときに使う。先端の形状記憶は比較的よい。ProminentなどのMicrocatheterに入れるときも比較的追従する。
Neo’s AstatoXS9-40:上記ワイヤーの40gバージョン。先端はほぼ「針金」級の堅さを誇る。IliacやSFAのCTOのProximalあるいはDistalの一発貫通に使う。とくにIliacのProxymalCapの貫通にはこのクラスの硬いワイヤーが必要であることがしばしばあるが、Perforationのリスクも高く注意が必要。ランデブーで使用するとき、Prominentであれば、まだ入りやすいが、Corsairでははねられたり、先端が入っても追従しなかったりしたことがある。
XtremePV:コイルワイヤー、先端0.8g、テーパーワイヤー。冠動脈XT-RのPV。さすがに、活躍の機会は少ないが、微妙に髪の毛のようなチャンネルが見えているときに入れ込むこともある。
ゼオンメディカル(FMD)
このメーカーの作るデバイスはファンキーなものが多い。下記のTruefinder、マイクロカテのX-Supportというのはすさまじい直線番長で、先端の曲げは筋肉の中でもくるくる回る。そのため、Wire先端の確認は必須であり、くるくるまわると血管外=筋肉内や後腹膜腔であることがある。
Truefinder45:コイルワイヤー、先端45g、ノンテーパー。0.018で非常に硬いワイヤー。先端のみならずシャフト部分も直進性が強い。そのため、SFA、Iliacいずれも血管外穿孔をきわめて容易におこしてしまう。そのときも手元に感触はない。原則体表エコーあるいはIVUSガイドでのパラレルワイヤーで使うこと。
Truefinder90:上記ワイヤーの90gバージョン。針金よりも硬い。エコーガイドでない限りは危険と考える。非常に強力な直線番長。どうしても最後の一発が決まらないIliacのCTOなどで、Poorman’sOutbackをエコーガイドで行うことがある。また、SFAのCTOでも同様に使用したことがある。正直、鉄筋の結束線ばりに硬いので金属針に入れるためには、先端の曲げを意識する必要がある。
FMD:
(PLX以外使用経験があまりないので詳細なコメントができていません)
実際の製造元として、日本のワイヤーは朝日インテックかFMDかといういう陰のメーカーですが、最近直販モデルが出現。NEXUSとINSPIREシリーズです。いずれもシャフトが非常に強くできていて、先端ピースは短いトリッキーな動きを見せてくれます。INSPIREシリーズはテーパー、NEXUSは鈍的なもの。スタビリティー、直進性ともに非常に高いワイヤーですが、30g以上は先端が血管外に出た場合であっても全く感触がありません。確かに、SFAのMiddle、BKAはほぼまっすぐなことが多いのでよいかもしれませんが、「ものすごい」直線番長なので使いこなすにはスキルが必要そうです。
Nexus14 0.014、コイルワイヤー、先端は30gと50g、ノンテーパー。
NEXUS-PLX 0.014 個人的には最近のお気に入り。先端が透明なプラスチックジャケットの10gとなっているワイヤー。非常にいい。Cruiseで途中までいくが、最後の一発が通らない、強いコーティングワイヤーが欲しいと思っていたところで登場した。現在、側副血行路からのアプローチでTCAをProminentBTAが通過した後、直線部分で使用しているが、非常によい成績。
さらに、AnteriorでCruiseのMicroNuckleで通過しないところをProminentNEOと組みあわせた一発狙いでの通過性もすばらしい。ただ、先端の感触がコーティングの宿命か、わかりにくいところもあるのでそこは注意が必要である。
Nexus1.5J:0.018、コイルワイヤー、先端が1.5mmJになっている。ナイチノールコアで非常に強い構造。破壊力も高い。以前、血栓破壊のためのミキサーとして使用したがすばらしい効果があった。先端の剛性がつよいため、1.5Jよりもいい破壊力をもっている
Nexus18REVO:0.018、コイルワイヤー、先端18g、テーパー構造、ナイチノールコアが特徴
Nexus18EXE:0.018、コイルワイヤー、先端35g、テーパー構造、REVOと違いSSコア。シャフト性能を重視しており、末梢用としてシャフト剛性は非常に高い
Cordis (FMD)
Chevalier Floppy:プラスチックワイヤー、先端2g、ノンテーパー。235cmなので山越しでBKAに対するPPIを行うときなど使いやすい。先端がプラスチックなので、微小血管にはいらないよう注意が必要。長さが長いのはメリットであるが、どうしてもプラスチックワイヤーだとCruiseと比較してしまう。こちらのほうが新しいモデルではあるのだが、Cruiseの追従性には追いつかない。不思議である。
Chevarier3g:コイルワイヤー、先端2g、テーパー。235cmで少し長め。スマートやルミネックスをはじめOTWステントを入れるときなどにも使える(もちろんシースは必要)
Chevarier30:コイルワイヤー、先端30g、テーパー。食いつき、貫通力ともに強い。SFAやIliacのTightLesionを「うねりながら掘り進める」ときには使えるが、テーパードワイヤーであるため、先端の感触はわかりづらい。その一方でエコーガイドでは使える。RubySuperHardで通過しづらいときに使う。ただ、Penetrationの性能としては、AstatoXS40には及ばず、少し中途半端な印象もある。その一方で、Astatoよりも先端のヘタレはおきにくいという長所もある。
Boston(フィルメックー朝日インテックグループ)
Aguru support:コイルワイヤー、先端?g、ノンテーパー。昔「Dejavu」というワイヤーがあったがその後継と思えばよい。「Support」と銘打つだけあり、シャフトは非常に優秀。180cmと300cmがあり、特に300cmは0.014の交換用ワイヤーとしてもよく使う。また、側副血行路をBTA+Cruiseで通しておいた後、深く入れば、このサポートワイヤーに交換して、ProminentをNEOに交換、最後の一発を破るための武器にもなる。そのくらい、シャフトもしっかりしており、使いやすい。また、CoatingWireでCross後、微小血管のPerforationを防ぐため、CoatingWireの先端をつぶさないために待機させておくためのワイヤーとしても使用する。特に、腎動脈ではステントのデリバリーとの相性がよいこと、末梢Perforationの防止なども含めてFirstChoiceのワイヤーとなる。
Aguru Pierce:0.014、コイルワイヤー、先端23g、ノンテーパー。貫通用のワイヤーであり、ASTATOXSやChevarierの対抗馬だがノンテーパーなので先端の感触がわかりやすい。最後の皮一枚でDistalに抜けるとき、あるいはTrueに戻すときに使っている。先端の形状もつけやすい。
凄い勢いで書きましたが、間違っているところも多く、また、自分なりの解釈であり、個別の症例、個々の術者により使い方は大きく違うと思います。
ただ、全てのメーカー全てのワイヤーをそろえて一通りフィーリングを知っておくのは大変なことなので、平坦なことばで正直な感想を書いてみました。