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2014/03/29

糖尿病・高血圧・脂質異常患者さんの心・血管リスクを誰がどうマネージメントするべきか

昨日、とある講演会に参加させていただいて、感じたことがあります。
心・血管疾患のリスク因子として糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙、肥満、家族歴があるのは皆さん御存知の通りです。しかし、それらでフォローをしている患者さん、それぞれのコントロール(血糖変動の少ないHbA1c6%前後、LD<70、収縮期140未満、LDL<70、EPA/AA比>0.5、BMI<25・・)は皆様心がけていますが、合併症の評価はどのようにされているのでしょうか。
そこで、専門医の存在が必要だと思います。リスク患者に対してスクリーニング検査(運動負荷心電図、頸動脈エコー、心臓エコー、冠動脈・大動脈CT、頭部MRI、場合によっては心筋シンチやMRI)を行うのは、そこに精通した生理検査技師や放射線技師が行い、さらにその評価はインターベンションを生業とする医師が行うべきだと思います。
例えば、IMT最大値2.0以上で40%に冠動脈疾患があるというのは有名なデータですが、当院で行ったけっか、糖尿病患者+IMT最大値2.0以上だと80%以上に冠動脈疾患の合併がありました。もちろん、その約半数の方はPCI、残り半分のかたは「至適薬物療法」となられています。
この約1年間で、患者さんに申し訳なく思うのが、PCIでステント留置、3ヶ月でアスピリンとプラビックスのうち、プラビックスを終了したところ、その2ヶ月後に小さな脳梗塞で手のしびれと複視(ものが二重に見える)をおこされたかたがいらっしゃることです。DAPT継続に関して否定的な意見は沢山ありますが「心臓は治ったのに、ものが見えにくくなって免許が撮れなくなった」「ふらつきや不全麻痺で外に出られなくなった」という患者さん、実際にいらっしゃいます。そのときにはじめてMRIをとって「ああ、ラクナ梗塞あったのか、皮質が全体に萎縮し、脳血流の低下があったのか」ということを経験しました。
心血管と脳血管の血管系は非常によく似通っており、脳血流の評価は冠動脈や末梢動脈の評価が必要、と思われる患者さんに対しては「絶対に行わねばならない」ことだと強くかんじました。実際それでラクナ、皮質の萎縮などがあるかたにはプラビックスを継続しています。
別にPCIをしなくてもPPIをしなくてもいいわけです。狭心症の症状がない、あるいはATP負荷シンチで心筋虚血が強く誘発されない、遅延造影MRIで心筋虚血が証明されない場合はまさに至適薬物療法(OMT)の適用で、しっかりコントロールすると実際にプラークが退縮するケースも多々あります。しかし、それはインターベンションを積極的に行うDrが半年あるいは1年ごとにCTなどで評価を行い、進行が見られた場合には、躊躇せずPCIを行う、ということが前提だと思います。Courage Trialなど2007年以前、しかも米国でIVUSもまともに使わず、ステントもBMSかCypher、さらにDPP-4もない時代のものです。「PCIなんかしなくても、薬物療法でいいんだ」という考えも一部はあるかもしれませんが、PCIか薬物療法かは、インターベンションが出来る医師が決定しなければならないと思います。

眼科に関しても同じで、私の循環器科外来にかかる=血管をみる=眼底で評価が必要、という方程式は成り立つわけです。こちらも、PCI後でフォローしている患者さんが「ものが見えにくくなった」と来院。また脳梗塞か?と思っていたところ、眼科の先生から「白内障です」という回答があったこともあります。

そのため、済生会西条病院では外来スタッフや各検査部門と相談し、連携医向けのリスク患者検査「フルパッケージプラン」というものを作りました。これで見逃しは絶対にありません。しかも心臓・血管エコー技師は専門認定技師が2名となりました。エコーも4台、最新式のものに更新が完了しました。開業医の方、糖尿病内科の先生方にストレスをかけず、患者さんの来院回数も最小限(1回または2回)ですみます。必要なら内視鏡もしてくれます。

これらのことは5月に行う連携講演会(第3回START-Meeting)、6月に行う地域講演会(愛媛県薬剤師会講演会)でお話させていただこうと思います。

それと、医師会の講演会にもかかわらず、入り口近くのロビー、講演会場フロア周辺のソファースペースで堂々とタバコが吸える環境が何度抗議をしても改善されない西条国際ホテルには怒りを覚えます。少なくともSTARTの時は公共スペースにおいて喫煙ができない環境にしていただいてはいますが、そろそろまともに取り組んで欲しいものです。
夏までに改善されなかった場合、医師会は「その会場を使いません」と強く主張することはしなければならないと思っています。

2014/03/11

第5回START Conference (第2回西条・新居浜生活習慣病ミーティング) 満席御礼!

心不全のA to Zを岐阜大学の西垣先生に御講演いただきました。まさに「AtoZ」で「心不全という宇宙」を、診断から治療までフルコースでした。ForresterとStarlingはすごいなあと思いつつも「心不全にはACEiとβ遮断薬」が印象的でした。血圧100以上、心拍数60以上あれば、市中臨床科でβ遮断薬の導入を、それぞれ、それより低い場合は循環器専門医による導入を、と明確な基準を出してくださいました。

この会場が満席(当初全席2人掛けとしていましたが、途中で後ろ2/3を3列掛けに変更するも追いつかず、フロアの椅子まで参加者であふれました)西条では最も大きな会場なので今後は考えなければなりません。
座長は愛媛労災の見上先生 これまでのSTARTにも司会、コメンテータなどたくさんご協力くださっています。一緒に西条・新居浜のインターベンションを盛り上げて行きたいです。
西垣先生のプレゼンテーションは本当に「わかりやすい」。カットオフライン、基準、使うべき薬、をはっきり教えてくださる貴重な講師です。心臓病専門医のみならず、内科医、医師会からも全国で引っ張りだことなられることがよく分かりました。参加者全てに対して満足できる講演をお願いします、心不全についてのコンテンツは「消化不良がないよう、かつ、内容のもれがないよう」お願いします、しかも90分で。。というとんでもない依頼におこたえいただき、本当にありがとうございました。
(そういえば、前回のSTARTのとき、佐藤勝彦先生にも「金子君からの無茶な依頼にどう講演するか、いろいろ考えてきました」と言われました・・)

β遮断薬は、私はHRがおちにくいアーチストをよく使っていましたが、血圧が低い患者ではメインテートのほうがよいのではないかという提案もありました。ACEiについては私はタナトリルを使っています。HFPEF(ヘフペフ):Heart failure with preserved EF、HFREF(ヘフレフ):Heart failure with reduced EFの違い(診断、治療)、急性期治療と慢性期治療の違い、専門医に紹介するタイミングは本当にわかりやすかったです。
でも大切なのは理学所見。頸静脈はどうか?患者さんを触ったときの印象(皮膚温、湿潤度、顔色など)、III音、体血圧、これだけで診断が一発できまります。
さらに、内分泌器官としての心臓(BNP)、そしてそのカットオフ値(40で危険、100だと一度エコーを)などについてのお話もいただきました。

僕の心不全Letureで毎回話するのは「Door to Lasix」「Door to Morphine」「Door to BiPAP(ASV)」というフレーズを出しますがこれは急性左心不全(水分の不均等分布による心原性肺水腫)に対する急性期治療です。
 
さて、そのHFPEFとHFREFを診断するのに最強のエコー。左はGE製Vividq、右は東芝製Viamo、それぞれ購入は1000万程度、500万程度(オプションにより大きく変動)でしょう。うちの病院は救急外来、病棟にViamoは備え付けられています。
  
日本光電のブース 左は遠隔モニタリングシステム本体(3G通信)、MRI対応ペースメーカー、右側は最新の心電計。ノイズレス、診断機能もバッチリ。下はその拡大写真で、MRI対応ペースメーカーの本体、リードのシマシマ、黄色い手帳、そしてMRIをとる手順を出してくれていました。本体が大きいことが問題ですが、3Gでチェックできるので患者さんが楽であること、リードがMedtoronicの9Fにくらべ、8Fと細いこと、MRI撮影プロトコルに制限がないことから、MRI対応ペースメーカーは当院では日本光電(SJM)を採用しています。

日本ライフラインのブース:私が執筆した記事の紹介、CRT-D、超小型長寿命ペースメーカーなど。このReplyDRは超小型でありながら、バッテリ寿命は10年以上とすばらしいものです。感染が最悪のイベントとなるデバイス治療において、交換回数が少ないことは極めて大切なことで、第1選択はこのReplyです。リードも細くて中隔ペーシングも40分以内です。となりはボストン、テルモのブースで、それぞれバルーンやステント、パンフレットを。
左が日本光電(SJM)の遠隔モニタリング+MRI対応ペースメーカー、右が日本ライフライン(SORIN)の超小型長寿命ペースメーカーです。植え込みのキズは半分です。

KANEKAさんは最新のSPPをもってきてくださいました。SPPは症例と対象を選ぶことが重要だと思います。
復活万歳のRyusei、待望のKUSABI、そして最強のCTOツールCrusadeも。Raiden3ももってきてくださいました。

充実のPhilipsブース こちらでは、今回のお話にもでてきたASV、外来でできる簡易PSG(一昔前のものとは大きく違います)Smartwatchの展示も、実際つけたりしている方もいらっしゃいましたが、そのシリコンの柔らかさ、チューブの取り回しの良さ、本体の小ささ、静音に驚かれていました。この治療法は薬と違って「副作用ゼロ!」肥満ー高血圧ー高血糖ー慢性心不全というマリグナントサイクルを打ち切るためにも睡眠時無呼吸の治療は「虚血性心疾患・閉塞性動脈硬化症・発作性心房細動、そして慢性心不全」を診療する医師にとっては絶対に行わねば成らないものです。当院では、検査・導入を行い、その後のフォローは、心不全の状態が安定されいる患者さんについて全例、かかりつけ医にお願いします。(処方の調整、服薬指導、減塩指導、リハビリ指導は当院で十分に行ってから紹介させていただいています)

美しいボストンのブース。ARASはまだまだ診断が遅れています。心不全を見たらARAS(腎動脈狭窄)を疑え、Stroke(脳梗塞や脳出血)をみたらARASを疑え、これはよく言ったものです。私の書いたパンフレット(3剤無効の難治性高血圧・進行性腎不全に隠れたARASにステント治療を行い、いずれも軽快したというものです。その患者さんは2年経過しましたが、再狭窄なし、降圧剤も不要、このままです。とにかく、「薬をやめるために」治療できることは治療する、このコンセプトが大事だと思います。

さて、いかがだったでしょうか?しかし、伊藤誠先生、優秀です。適格な質問、だれもがききたかった質問、本当にありがとうございました。西条東(飯岡)の医療は安心です。

参加くださった先生方、コメディカルの皆様、本当にありがとうございました。まだまだSTARTはコンテンツを増やし、誰もが「きてよかった」と思われる研究会を作っていこうと思っています。今回は、今治、西条、新居浜と本当に広いエリアからの参加をいただくことができました。
西条市の禁煙はまだまだ遅れています。新居浜から大橋医師会長・加藤先生も御参加くださり、どうすればよいかというアプローチを教えてくださいました。この西条国際ホテルも喫煙フリーのホテルであり、協賛のノバルティスさんとともに「とにかくこの講演会の間だけでも、ロビーとこの講演会会場周囲だけでも」禁煙にしてほしいと何度もお願いして、なんとかしてもらったという恥ずかしい状況です。分煙化された飲食店もほとんどありません。愛媛にも禁煙推進の会はたくさんあり、それぞれ活躍されていらっしゃいます。
今回、ノバルティスさんから「受動喫煙」「職場禁煙のススメ」「禁煙外来」のパンフレットやポスターも多数展示してくださいました。この禁煙ブースについては、今後のSTARTでも続けていこうと思います。