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2015/12/27

「愛あるえひめ いいよかん」30%引きクーポン

年末に利用させてもらったこのアンテナショップ(楽天)。すごい。
http://www.rakuten.co.jp/e-bussan/

定価でしか買えないものたちが30%引き。しかも、上級品がそろっている。石鎚は蔵元から直送だったので、注文確定から1日で実家にとどく(そりゃチャリで2分だから当然か?)し、送料をいれても、買う量が量なので、街の酒屋さんで買うよりも安い。もちろん、おすすめは純米大吟醸。
http://item.rakuten.co.jp/e-bussan/10000325-1/

ほか、おすすめは栄光酒造の「七折の梅酒」。蔵元の梅酒というのはどこでも手に入るが、この七折は滅多に手に入りません。そして、香りが違います。720mlが1700円と梅酒としては高いものですが、ワインでは1グラスにも満たない価格です。七折も梅農家が減っていて、いつまでいただけるか。ちなみに、金子家の自家製の梅干しは実家の庭ものが1つ、七折のものが1つとなっています。
http://item.rakuten.co.jp/e-bussan/10000313/

酒ばかり、といわれるのでこれから旬を迎えるかんきつも。真穴みかんは甘みが強く、愛媛県では最高級とされるものです。5Kgで3500円といい値段ですが、これが相場で、3割引だとかなりお得です。私が生まれ育った街の「だんみかん」は木が枯れてしまい、昨年も、今年も食べられませんでした。農家の高齢化はほんとうに心配です。八幡浜もかなり高齢化がすすんでいるとのことでこの真穴みかんも何年食べられるか、本当に心配です。都会で消耗している若者さんが移住すればいいのにと思います。
http://item.rakuten.co.jp/e-bussan/c/0000000381/

と、イケダハヤト氏のようなブログになってしまいましたが、年末年始、WEBを見る機会がありましたら是非Tryしてみてください。
愛媛って、こんなにおいしいんです。かつて、西条の米は日本の米のなかで「もっとも不味い」とされましたが、この10年間、農家の努力、品種を日本晴・松山三井・コガネマサリから、コシヒカリ・ヒノヒカリ・にこまるへの作付け変更でかなりおいしくなりました。

もしかしたら年内最後のブログになるかもしれませんので
「2017年は 是非 愛媛に 西条に 遊びに来てください」ミシュランで選ばれた「四国」そのなかでも水・米・酒・野菜・魚・肉 すべてが美しく、おいしい街です。



2015/11/17

急性心筋梗塞・不安定狭心症に対する緊急PCIのTips

薬剤溶出ステントが標準的に使用されるようになった現在、再狭窄による狭心症に対する待機的PCIは激減し、若い術者が最初に行う症例は急性心筋梗塞(STEMI)をはじめとする緊急PCIが殆どとなっている。クラシカルに、STEMIに対するPCIで最も大切なことは「Door-To-BalloonTimeであり、診療報酬でも評価されていることとなった。学会やライブ等ではDoor-To-Catheter-Lab時間の短縮について多数の発表がなされているが、Puncture-to-Balloonについて論じられていることは少ない。

急性前壁心筋梗塞の心電図 さあ、どうします?


穿刺部位の選択
病歴・心電図でSTEMIがきわめて疑わしい場合、著者は両鼠径部を十分に消毒した上で、左手首穿刺を第1選択とする。スリットシース(Medikit)やグライドシーススレンダー(Terumo)により、それぞれ6Fr25cmや場合によっては、内腔7Fr相当のシースも使用となっている。デバイスの進化により、AMIACSなどの病変であれば、7Fr以上のシステムを使用する必要性は殆どなくなり、著者の施設では、6FrシステムをRoutineとしている。橈骨穿刺のメリットは、状態がよいところで、動脈確保を一つ行えるため、状態悪化時のIABPPCPS挿入が鼠径からすぐに行えることである。極論では鼠径は、心臓マッサージ下でも触知することができるが、橈骨はほとんどの場合において触知しないこと、IABPは一部の特殊なものをのぞき、PCPSは全例鼠径からでなければ使用できないため橈骨動脈を有効活用することで、それらのデバイスにとって必要な血管を確保できるからである。
なお、触知不良や動脈硬化により橈骨穿刺に3分以上要する場合は、速やかに鼠径穿刺としている。緊急CAGは側副血行を確認するため、LCA病変が疑われる場合はRCAから、RCAが疑われる場合はLCAから造影している。RCAの場合はBiplane1ショット(RAO-CranialLAO-Caudal)、LCAの場合はBiplane2ショットと必要な場合、Pure-cranialまたはPure-caudalを追加している。これでGCをきめる。GCはクラシックなもので、Ikariを除くとTFIで行いやすいよう設計されている。血管の走行から冠動脈に対する入り方、バックアップ力を鑑みると右手首でなく左手首アプローチの方がすぐれている。

GCの選択 個人的には形状のラインナップが多く、硬くて熱だれもしにくいLauncher(Medtronic)を好んで使うが、先端がシャープであるため、解離を作らない、ということに関して、注意は必要である。
好みはあるが、LCAの場合、著者はJL4カテーテルの入り方をSpiderで判断し、原則それでよい場合にはEBU3.5SHを選択しているが、形状によって、IL3.5(Terumo Heartrail)を使用することもある。最も大切なのはLMTに解離を作らないこと、次に対象血管に対して可能な限りコアキシャルであることとである。LCXに対する場合はVodaタイプやきわめて限定されるがAL2を用いることもある。

RCAの場合、前方開口であれば、まずSAL075を第1選択にしている。ただし、このGCは入口部の解離を作りやすいこともあるため、十分な注意が必要である。近くの場合であれば、押す・引く・回すの操作で出し入れのコントロールが行いやすいこと、#3以遠でバックアップもとることが可能であることから好んでいる。

ワイヤーの選択
1選択は先端加重が小さく、トルクコントロールが効きやすく、先端形状がつくりやすいJoker(日本ライフライン)としている。Jokerはコアシャフトまで太いため先端の感触が非常に指まで伝わりやすく、血栓あるいはプラークの性状を直に感じることができる。先端は1段階で比較的大きめの曲げとし、比較的速めの回転と進め方でクロスさせるのに適している。また、末梢Perforatoin防止のため、病変を通過させた後は、あえてKnuckleとするようにつとめている。
2選択は先端加重が比較的小さく、トルクコントロールがよい、Sion-Blue(朝日インテック)を用いる。こちらは先端を2段階曲げとして、狙った方向を定めてそこをスッと通すのがよいポイントである。コアシャフトが細いため、マイクロカテーテルやCrusade(カネカメディックス)OTWルーメンとの相性は非常によい。
3選択でポリマージャケットワイヤーのSionBlack(朝日インテック)となる。どうしても枝あるいは本幹が選択できないとき、石灰にはねられるときなどに使用する。個人的に末梢Perforationの危険性があるため、コーティングワイヤーそのもので手技を貫徹することは絶対にないこと、はじめに通常のコイルワイヤーでプラークや狭窄の感触を確かめた上での操作が、解離の防止にも有用であると考えている。(透析患者の屈曲石灰化+長病変は別と考える) Cross後は必ず、Kusabiを用いてコイルワイヤーに交換する。

マイクロカテーテルの選択
基本は緊急病変の場合、マイクロカテーテルを用いることが多い。理由は、より正確にプラークの性状を自分自身が感じること、絶対に解離を作ってはならないため、ワイヤーに加重をかけることなく、通すためにはトルクスタビリティーが要求されるからである。Kusabi(カネカメディックス)を用いれば、除去に何のストレスもない。現在、細くて硬いQualia(オーバスネイチメディカル)やProminent(東海メディカル)を用いるか、柔らかくて追従性のよいMizukiFXを用いるかは症例に応じて使い分けてはいるが、最近のマイクロカテーテルは追従性も先端の形状も優れており、緊急で使う場合に大差はないと考える。しかし、Crusadeは別物である。バックアップ力の強さを得るため、RXルーメンにJokerなど比較的太めのコアシャフトをもつワイヤーを通した上でOTWルーメンにSionシリーズなど比較的細めのコアシャフトを有するワイヤーを用いて側枝または本幹をとらえることは、従来、マイクロカテーテルのみで操作をしていた時とは別物の正確さと容易さである。CrusadeKとなり、先端チップがLong-Taperとなったことで、プラークの先まで入れることもできるため、Corsairのような貫通カテーテルのような目的としても使えること、ステント留置後、ストラットを着実に通すことが可能であること、末梢Slow-FlowNo-Reflowとなった場合の薬剤注入にも利用可能であること、もちろん、慎重を期するが、OTWルーメンからの血流確認や末梢造影にも利用できるため、積極的に使用している。201511月現在では、緊急において、Crusadeがマイクロカテーテルとしても第1選択になってきている。

IVUSの選択
緊急症例の場合、血栓の性状や分布、プラークの分布、石灰の有無、前後の血管径を把握することが大切であり、どの機種でも問題はないと思われる。機械式ではNurdoが気になることやPullbackスピードが変わらないことから、電子式でマーカーを有すEagleEyeを使うことが多い。

吸引デバイスの選択
内腔が大きく、通過性がよく、KinkしにくいThrombuster(カネカメディックス)を用いる。赤色血栓が疑われる場合(血管造影での透亮像やIVUSでの血塊所見)はそれがなくなるまで、そうでない場合にも、必ず最低3回は吸引し、血小板血栓、破裂したプラーク内容物を可能な限り吸引する。細かい運動となめらかな運動を組み合わせることで、より多くのデブリスを吸引出来ると考える。


前拡張バルーンの選択
浮遊血栓やあきらかにUnstable-Plaqueが有る場合はダイレクトステントを行うが、必要に応じて、前拡張をすることもある。
石灰化がある場合には、通過性がよく割もはいるScoreflex(オーバスネイチ)を用いることが多い。また、Scoreバルーンで全拡張をした場合、その割の入り方から、側枝が残りやすい印象もある。ただし、6FrKBTを行うことができないため、大きな側枝があり、KBTを要する場合には、通過性がよく柔軟性の高い、Ikazuchi-ZEROKamui(朝日インテック)2.0x15を用いる。10秒程度で拡がった段階で終了とする。側枝を先に拡張する場合は、末梢側に解離がないことを必ず造影で確認する。同じサイズあるいは同じバルーンを用いることで、長さ、病変の特性を着実に見極めることができる。

ステントの選択
かつて、Close-SELLでストラットも厚いClassic-Cypher(Cordis)Bx(Cordis)を使用していたことを考えると、現在ではどのステントを選んでも大差はないと考える。Xience(アボット)もAlpineになってからは先端チップやシャフトが大きく改善され、当初みられたPromusElementとの通過性やバルーン性能の差はなくなっている。著者は近位部かつ側枝が大きな場合、少しでも拡張しやすいこと、ステンレススチールの信頼性と視認性、シャフト性能から、BMX-J(バイオセンサーズ)を用いることが多い。3mm以下の場合は、先述のXienceを使用する。かつてはプラチナ含有ステントである、PromueElement(ボストン)を第1選択としていたが、CTフォローを原則としているため、非常にハレーションが強く、少なくとも3mm以下では正確な評価が得られづらいこと、再構成する技師の負担を軽減するため、Alpine登場以後は全く用いていない。2リンクであっても3リンクであっても、正直、側枝の確保に大差はないと考える。

後拡張バルーンの選択
KBTを行う場合は、デバイス節約のため、ステントバルーンと前拡張に用いたバルーンを用いるが、近年言われている「303回拡張」を緊急のAMIACSで行うことは、血圧低下、患者の胸痛、不整脈の出現などから通常のバルーンでは非常に行いづらいことが多い。特に、夜間など術者1名のみしか医師が居ない環境(当院では通常でも1名だが)では、これらの事態を避ける目的でIABPなどを留置することもある。そこで、末梢還流が可能な流星(カネカメディックス)を用いる。メーカーからはワイヤーを抜いた状態であれば、還流可能、とあるが、ワイヤーを抜かずとも、十分な末梢還流が得られる。あくまで小生の経験測ではあるが、通常のバルーンで15秒程度しか耐えられないLMTLAD入口部、RCA近位部であってもこれを用いると30秒から60秒拡張しても血圧低下も不整脈も生じない。(さすがに60秒以上拡張した場合には生じることがある)。また、例え15秒であっても末梢血流を遮断しないことは、AMIACSで微少塞栓が起きていると考えられる末梢血管床の還流状態を阻害しないということでもあり、特に緊急症例においての還流型バルーンはもっと積極的に用いられるべきである。

最終確認
IVUSでプラークにステントが密着していること、DESであれば、MLA5mm²の確保が得られていること、末梢塞栓や解離がなければISDNを注入して終了でよいと考えている。

補助デバイス
当院では急性心筋梗塞に対し、心負荷をとる目的でのASV4-8設定)+酸素5L投与はルーチンとしている。これにより、たとえLCXであっても心機能が障害を受けた状態でのベッド上フラット環境における、心負荷は少しでも低減できること、心室細動などが生じた場合の呼吸アシストが着実となるため、二重の効果が得られている。
IABPは心不全が合併している場合やカテーテル室入室時の収縮期血圧100または拡張期血圧60未満の場合には、造影前に鼠径から挿入、造影を行い病変が心機能を大きく低下させるLAD近位の場合、あるいは末梢塞栓をきたしやすいRCA近位の場合にはまず挿入する。東海メディカルのブレード入りバルーンは耐キンク性にも優れ、ASO合併例においてもエラーアラームが鳴ることはほぼない。通常は35mlを使用し、体格に応じて30または40の使用としている。
RCAまたはRCA病変を合併したLCXの心筋梗塞ではぺーシングを使用、SGカテーテルは心不全の状態に応じて使用している。鼠径からエドワーズの5Fr対応のものを緊急時には利用する。感染、離断、深部静脈血栓予防のため、3日以後の留置をする場合は、改めて、内径または鎖骨下からCCUで留置している。

薬剤
特に再還流時の血圧低下は致命的であるため、吸引前、またはPOBA前にはフェニレフリンを用いてSBP160DBP100以上となるよう心がけている。徐脈傾向がある場合は硫酸アトロピンを1/2A、フェニレフリンより先に静注する。それでも、Slow-FlowNo-reflowとなった場合には、可能な場合にはシースから(7Frグライドシースを入れて6Frガイドを使用している場合など)、そうでない場合には、冠動脈から大きく外したガイドカテーテルから20mlの動脈血を採取したものを、ガイドから思い切り注入し、末梢還流を確保している。その後、薬剤として、CrusadeまたはFCカテーテルからISDNやニコランジルを選択注入しているが、特にニコランジルの注入時は不整脈が生じやすいため、スタッフがいつでもDCを施行できる状態で行っている。DoAは血圧や心拍数に応じて程度の使用、DoBは右心不全を合併している場合に使用している。カリウムはシース挿入時の動脈血採血で4.0未満の場合、速やかに末梢のメインに加えて補正している。ヘパリンは動脈ルート確保後、体格に応じて7000から10000単位動注し、ACT>250となるようにしている。PCI中は30分ごとにACT計測を行うが、AMIACSPCI60分を越えることは殆どないため、1回程度の計測と終了時の計測で終わっている。
なお、持続投与として、VPCがほんのわずかでも見られる場合、K<4.0の場合はリドカインを、シグマート48mg+NS100mlの12ml/hの持続静注、許される場合のISDNや微量HANP(5000μgを5%Tz100mlで希釈したものを1-2ml/Hr)も併用する。

緊急は特に手技時間の短縮にこだわっている。処置時間が長くなれば長くなるほど、合併症が生じる危険性は高く、患者の安全を確保し、家族の不安を低減するためにも「Simple is the best」「Less invasive」を心がけ、大きな合併症がない限り、造影も含めての手技時間60分未満、透視時間15分未満、造影剤100ml未満を達成している。(2013年から2015年)
もちろん、非責任血管においても、高度狭窄病変がある場合、上記の範疇であれば、完全血行再建を行っている。これにより、CCU入室後の追加PCIや再PCIはほとんどなく、心臓リハビリテーションも行いやすくなっている。


以上 この近年のデバイスによりかなり容易となった緊急PCITipsをまとめてみた。個人情報保護の観点から、症例の具体的な写真をWEBで公開できなくなったことが残念でならないが、このつたない文章からイメージだけでもしていただきたい。何らかの形でこの文章は図も加えたものとともに、CloseでPublishしたいと考えている

2015/11/15

久々の投稿です。 愛媛県「産官学」医療プロジェクト

夏前に、学部学生の頃から指導をいただいていた愛媛大学医学部医療情報部・日本医師会総合政策研究所の石原教授が組まれたプロジェクトの一つ「愛媛県産官学・医業協業プロジェクト」を進めてきていました。大切なのはスピード・安全性・信頼性・ローリスク。
その第1弾として、株式会社「タケチ」さんの小田工場で作られている工業用シリコーンシートを医療現場で活用できないか、という取り組みを行いました。このシリコーンシートは「工業用」を謳うだけあり、きわめて強い耐久性と柔軟性を有しながら「抗菌」「食品安全基準準拠」と、安全性も高いため、医療・介護の現場で強力な滑り止めとして使用できないかというものです。院内で検討し、同意してくださった病棟・スタッフ・患者さんの協力のもとこの3ヶ月間、安全性と有用性を検証してきました。

とにかく「滑らない」「動かない」「メンテナンスフリー」というところは高く評価され、それまで5分に1回のペースで身体を担ぎ上げていた、車いすの患者さんは15分から30分、滑り落ちることがなくなりました。看護職、介護職の皆様を最も悩ませるのが「体位交換」「移動」による腰の負担です。この、シリコーンマットの「産」側のプロジェクトリーダーである方ご自身が脊柱管狭窄症の経験があったこと、病棟で同疾患による休職や離職を余儀なくされていたスタッフが多数でてきたことから、現場と開発者のニーズが一致したものです。

HITO病院はものすごくきれいな病院でした。しかし、ランニングコストもかかりそうです。
いよいよ明日が最終の「みきゃん」も応援してくれています。これは愛媛県の認定プロジェクトですので、パンフレット1面に登場しています。

ポイントはこの価格です。6ヶ月間で「1枚も破れなかった」ということから、一度購入してしまえば、なかなか追加購入がないだろう、ということで、価格設定については、工場とかなり折衝してくださったものです。インターネットで売られているシリコーンマットとは、抗菌性能、疎水性能、耐薬剤性能、いずれもすぐれているデータもあります。(抗菌性能については、後日追加予定)

ちなみに、私自身は、椅子に座るとき、おしりの下に敷いています。これで、ぴったり動きません。リクライニングをして、居眠りをしても、体重70Kgがびくともしない、優れものです。次は、高速バスや飛行機で移動するときに使用してみようと思っています。


2015/09/28

これからはじめる天体写真のABC

久々に晴れた夕方。星の写真でも撮るか、と思っていたところ「明日は中秋の名月でスーパームーン」というニュースを見てしまいました。月が出ていると星の写真は撮れません。白ぼけてしまうか、全く何も写らないか、というものになってしまいます。
というわけで、月を撮るしかないというシチュエーションでした。Facebookに天体写真をこれまでにもいくつかUpしましたが「どうやったら撮れるのか」というメッセージをいくつかいただきましたので紹介させていただきます。
1:追尾装置(赤道儀)ご存じの通り、天体は日周運動をしているため、必ず追尾装置が必要になります。いわゆる「赤道儀」というものです。星夜写真(星座や天の川など)であれば、通常の三脚に簡易赤道儀で十分です。一番知られているのはビクセンのポラリエですが、「結構」します。
http://www.vixen.co.jp/product/at/polarie/index.htm
ペンタックスを使っているのであれば「アストロトレーサー」もいけます。
http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/o-gps1/
しかし、これでは、望遠レンズは絶対に搭載不可能です。望遠レンズで追尾するためには、高橋製作所であればスカイポートTG-SP:搭載2.5Kg程度 (本体63000円だがいろいろいれると10万)
http://www.mmjp.or.jp/takahashi-sb/data/tgsd.htm
またはPM-SP:搭載4Kg 118000円(高い!)
http://www.takahashijapan.com/ct-news/news_topics/news_pm-sp.html
後者であれば、APSなら400mmクラス、フルサイズなら300mmクラスの望遠レンズが乗ります。ただし、三脚もしっかりしたものが必要で、スリックのカーボマスター800シリーズが必要だと思います。
左がTG-SPに5cm屈折望遠鏡(廃盤) 右はP2s(PM-1の前身)に9cm屈折望遠鏡(ちょっと赤道儀がしんどそう)

実際の撮影では、カメラをつけるため、モーメント荷重を考えると鏡筒+2Kgと考えるべし

2:レンズ:月であれば600mm程度で下記の通り写ります。望遠鏡であれば、BORGの50mmなどで十分ですが、理想的には「フローライト」、そうでなくとも「SD」レンズを選択しなければ、色収差が激しく、吐き気をもよおす画像になってきます。「イメージサークル」という文字もありますが、それは今のAPSCであればどのような被写体でも問題なし、フルサイズであっても月や土星・木星程度であれば、問題有りません。ただし、ほんのわずかな振動でもぶれるため「ピントを合わせるところ=接眼ユニット」がしっかりしたものであること、ピント微調節装置は「必須」です。
木星は大きく明るいため、76mm程度の望遠鏡で150倍程度でも十分ですが、土星は暗く小さいため、100mm、理想的には120mmで200倍程度の拡大が必要になります。口径の3倍程度の倍率まで、バローレンズ(拡大レンズ・Extender)を用いると可能とされますが、大気条件の悪い日本では2倍程度にするほうがかえって綺麗にとれます。
3:屈折式か反射式か
扱いやすいのは屈折式ですが、120mmの3枚玉(F6前後)のものになると40万円くらいします。2枚玉のF8であれば、120mmで25万程度となりますが、どうしても色の収差がでることや、アンドロメダなどの星雲を撮るときには、暗いため、F6前後の明るいものがおすすめです。反射式はかつて20cmが25万円程度で売られていましたが、最近は扱いにくいことから減少してきています。私は1990年製のMT-200という口径200mmー焦点1200mmというF6反射を使っていますが非常に鮮鋭な画像が得られます。口径こそ力とはよく言ったもので、大気の条件がよい場合は20cm反射望遠鏡はすばらしいパフォーマンスを出してくれますが、私のお気に入りの高橋製作所はもう製造していないため、中古でMT-160かMT-200を探すほかありません。屈折であれば、タカハシFC-76DCまたは100くらいが扱いやすく、稼働日も多いと思われます。それ以上大きくなると、全てが大きく重くなるため、稼働率が高くなると思います。120mmの屈折はかなり重いです。
http://starbase.dw.shopserve.jp/SHOP/TS-Te12.html
ビクセンではAX103、あるいはED115という機種は少なくとも、眼視であれば、かなり鮮鋭な画像をだしてくれます。質の悪い20cm屈折望遠鏡よりも高性能10cmの方が明らかに美しいものです。主流は3枚玉ですが、10万安くて口径が15mm大きいというメリットは大きく、自分が買うのであればED115にします。 これらはヨドバシカメラでみることもできます。
http://vixen.co.jp/product/at/tube/261604.htm
http://vixen.co.jp/product/at/tube/261444.htm
かつて、PENTAXが超高性能写真撮影用屈折を出していましたが、それが、数年前にビクセンで復活(VSD100)
http://www.vixen.co.jp/lp/vsd.htm
しましたが、62万円とかなり高価で、しかも眼視には使えないものです・・・
4:撮影方法
月、星雲、星団は「直焦点」という方法で望遠鏡を直接カメラにつける方法です。カメラアダプターにカメラマウント(通常Tリングといわれる)をつけて撮影します。月はかならず「欠けているところ」でクレーターが見えるため、そこでしっかりとピントをあわせておいて、真ん中に移動する必要があります。望遠鏡のレンズは、望遠レンズと違い、中央と周辺でかなり画質が違う(そのためイメージサークルという言葉もある)ため、必ず中央で写真を撮る必要があります。星雲や星団は感度を1600から3200として、1分から3分程度の露出でOKです。感度が許せば、6400でも12800でも、ぶれやズレをなくすため、イイと思います。 ちなみに、普通に目で見ても、星雲星団は「ぼやっとした白いもの」がある程度で赤くみえたり、渦が見えたり、ということはありません。「メシエ」という番号がついたものは小さな望遠鏡でも比較的見やすいため、撮影しやすいです。

満月 SKY90+エクステンダーで800mm相当 ISO400で露出1/800秒 色温度:太陽

満月 SKY90+エクステンダーで800mm相当 ISO400で露出1/800秒 色温度:曇り

アンドロメダ大星雲(M31) MT-200直焦点 1200mm相当 ISO3200で露出3分程度
オリオン大星雲(M42) MT-200直焦点 1200mm相当 ISO3200で露出3分程度
(馬頭星雲やM78星雲は小さく、暗いので一気に難易度があがる)
 
木星・土星、あるいは「惑星状星雲」など小さな被写体は「拡大撮影」といい、望遠鏡に接眼レンズをつけて拡大率を上げた撮影方法が必要となります。わずかな震動でもぶれてしまいます。木星を9cmの望遠鏡で150倍で撮るとすると、概ねISO800で1.5秒程度、土星であれば、ISO1600で2秒程度が目安でしょう。しかし150倍程度では土星は「暗闇に浮かぶUFO」です。2000万画素オーバーのカメラであればトリミングして拡大するのもアリでしょう。
木星 MT-200+エクステンダー+Or7mm拡大撮影 (200倍程度)

昔はフィルムカメラでASA400、いいところ800のものを使い、10分、20分、あるいは60分ととっていたものですが、今では、ライブビューを使い、月、あるいは明るい恒星でバシッとピントを合わせておき、ガイドスコープ(場所を合わせるためのサブ望遠鏡)でターゲットを入れて、シャッターを押す、という方法がスタンダードです。その一方で、ピントがかなりシビアになってきており、ピント微動装置が必須になってきています。
また、大気条件も年々悪くなってきており、20cmの望遠鏡を活かすことはほぼできません。それもあって、120mm程度の高性能屈折望遠鏡が売れていると思います。
接眼レンズは「みるため」のものと「撮影するため」のもので違ってきます。みるためのものならビクセンのLVシリーズは見口も大きく、明るく、視野も広く、とても見やすいです。撮影の場合はタカハシのAbbeやLEシリーズでなければ、カメラアダプターの中に入らないこともあります。

赤道儀のおすすめはタカハシであれば、PM-1に76mmの屈折または60mmの屈折+星野カメラ、EM-11Temma2Mに100mmの屈折、EM-200Temma2Mに120mmの屈折(130mmも可能だがかなり高い)がマッチするとおもわれますが。EM-200以上になると大人の男でも重いです。EM-11であればなんとかなります。PM-1でもちょっと重く感じます。
ビクセンであれば、最新のSXPまたはSXD。モーターは絶対にステッピングモーターが必須となること、機種によって「自動導入コントローラ:STAR-Book-TEN」がついていないものもあるため要注意です。

三脚もしっかりしたものが必要でこれだけで数万円します。

望遠鏡そのものは買い換える(アップグレード)することがあっても赤道儀は高価でありなかなかアップグレードできないため、最初から、しっかりしたものを購入し、使い慣れておくことが必要だと感じます。真っ暗な中でコントローラーやハンドルを触るにはどうしてもそれらを自分の体の一部にする必要があります。

まずはしっかりした三脚(スリックのカーボマスターかベルボンでも同等のもの)と自由雲台、それにペンタックス一眼+アストロトレーサーでTryをおすすめしてみます。

ほか、KENKO、アメリカのセレストロンやミードなどはコンピュータの導入も早く、使いやすいものも多いと思いますが、自分で使ったことがないため、なんとも言えません。