というわけで、月を撮るしかないというシチュエーションでした。Facebookに天体写真をこれまでにもいくつかUpしましたが「どうやったら撮れるのか」というメッセージをいくつかいただきましたので紹介させていただきます。
1:追尾装置(赤道儀)ご存じの通り、天体は日周運動をしているため、必ず追尾装置が必要になります。いわゆる「赤道儀」というものです。星夜写真(星座や天の川など)であれば、通常の三脚に簡易赤道儀で十分です。一番知られているのはビクセンのポラリエですが、「結構」します。
http://www.vixen.co.jp/product/at/polarie/index.htm
ペンタックスを使っているのであれば「アストロトレーサー」もいけます。
http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/o-gps1/
しかし、これでは、望遠レンズは絶対に搭載不可能です。望遠レンズで追尾するためには、高橋製作所であればスカイポートTG-SP:搭載2.5Kg程度 (本体63000円だがいろいろいれると10万)
http://www.mmjp.or.jp/takahashi-sb/data/tgsd.htm
またはPM-SP:搭載4Kg 118000円(高い!)
http://www.takahashijapan.com/ct-news/news_topics/news_pm-sp.html
後者であれば、APSなら400mmクラス、フルサイズなら300mmクラスの望遠レンズが乗ります。ただし、三脚もしっかりしたものが必要で、スリックのカーボマスター800シリーズが必要だと思います。
左がTG-SPに5cm屈折望遠鏡(廃盤) 右はP2s(PM-1の前身)に9cm屈折望遠鏡(ちょっと赤道儀がしんどそう)
実際の撮影では、カメラをつけるため、モーメント荷重を考えると鏡筒+2Kgと考えるべし
2:レンズ:月であれば600mm程度で下記の通り写ります。望遠鏡であれば、BORGの50mmなどで十分ですが、理想的には「フローライト」、そうでなくとも「SD」レンズを選択しなければ、色収差が激しく、吐き気をもよおす画像になってきます。「イメージサークル」という文字もありますが、それは今のAPSCであればどのような被写体でも問題なし、フルサイズであっても月や土星・木星程度であれば、問題有りません。ただし、ほんのわずかな振動でもぶれるため「ピントを合わせるところ=接眼ユニット」がしっかりしたものであること、ピント微調節装置は「必須」です。
木星は大きく明るいため、76mm程度の望遠鏡で150倍程度でも十分ですが、土星は暗く小さいため、100mm、理想的には120mmで200倍程度の拡大が必要になります。口径の3倍程度の倍率まで、バローレンズ(拡大レンズ・Extender)を用いると可能とされますが、大気条件の悪い日本では2倍程度にするほうがかえって綺麗にとれます。
3:屈折式か反射式か
扱いやすいのは屈折式ですが、120mmの3枚玉(F6前後)のものになると40万円くらいします。2枚玉のF8であれば、120mmで25万程度となりますが、どうしても色の収差がでることや、アンドロメダなどの星雲を撮るときには、暗いため、F6前後の明るいものがおすすめです。反射式はかつて20cmが25万円程度で売られていましたが、最近は扱いにくいことから減少してきています。私は1990年製のMT-200という口径200mmー焦点1200mmというF6反射を使っていますが非常に鮮鋭な画像が得られます。口径こそ力とはよく言ったもので、大気の条件がよい場合は20cm反射望遠鏡はすばらしいパフォーマンスを出してくれますが、私のお気に入りの高橋製作所はもう製造していないため、中古でMT-160かMT-200を探すほかありません。屈折であれば、タカハシFC-76DCまたは100くらいが扱いやすく、稼働日も多いと思われます。それ以上大きくなると、全てが大きく重くなるため、稼働率が高くなると思います。120mmの屈折はかなり重いです。
http://starbase.dw.shopserve.jp/SHOP/TS-Te12.html
ビクセンではAX103、あるいはED115という機種は少なくとも、眼視であれば、かなり鮮鋭な画像をだしてくれます。質の悪い20cm屈折望遠鏡よりも高性能10cmの方が明らかに美しいものです。主流は3枚玉ですが、10万安くて口径が15mm大きいというメリットは大きく、自分が買うのであればED115にします。 これらはヨドバシカメラでみることもできます。
http://vixen.co.jp/product/at/tube/261604.htm
http://vixen.co.jp/product/at/tube/261444.htm
かつて、PENTAXが超高性能写真撮影用屈折を出していましたが、それが、数年前にビクセンで復活(VSD100)
http://www.vixen.co.jp/lp/vsd.htm
しましたが、62万円とかなり高価で、しかも眼視には使えないものです・・・
4:撮影方法
月、星雲、星団は「直焦点」という方法で望遠鏡を直接カメラにつける方法です。カメラアダプターにカメラマウント(通常Tリングといわれる)をつけて撮影します。月はかならず「欠けているところ」でクレーターが見えるため、そこでしっかりとピントをあわせておいて、真ん中に移動する必要があります。望遠鏡のレンズは、望遠レンズと違い、中央と周辺でかなり画質が違う(そのためイメージサークルという言葉もある)ため、必ず中央で写真を撮る必要があります。星雲や星団は感度を1600から3200として、1分から3分程度の露出でOKです。感度が許せば、6400でも12800でも、ぶれやズレをなくすため、イイと思います。 ちなみに、普通に目で見ても、星雲星団は「ぼやっとした白いもの」がある程度で赤くみえたり、渦が見えたり、ということはありません。「メシエ」という番号がついたものは小さな望遠鏡でも比較的見やすいため、撮影しやすいです。
アンドロメダ大星雲(M31) MT-200直焦点 1200mm相当 ISO3200で露出3分程度
オリオン大星雲(M42) MT-200直焦点 1200mm相当 ISO3200で露出3分程度
(馬頭星雲やM78星雲は小さく、暗いので一気に難易度があがる)
木星・土星、あるいは「惑星状星雲」など小さな被写体は「拡大撮影」といい、望遠鏡に接眼レンズをつけて拡大率を上げた撮影方法が必要となります。わずかな震動でもぶれてしまいます。木星を9cmの望遠鏡で150倍で撮るとすると、概ねISO800で1.5秒程度、土星であれば、ISO1600で2秒程度が目安でしょう。しかし150倍程度では土星は「暗闇に浮かぶUFO」です。2000万画素オーバーのカメラであればトリミングして拡大するのもアリでしょう。
木星 MT-200+エクステンダー+Or7mm拡大撮影 (200倍程度)
昔はフィルムカメラでASA400、いいところ800のものを使い、10分、20分、あるいは60分ととっていたものですが、今では、ライブビューを使い、月、あるいは明るい恒星でバシッとピントを合わせておき、ガイドスコープ(場所を合わせるためのサブ望遠鏡)でターゲットを入れて、シャッターを押す、という方法がスタンダードです。その一方で、ピントがかなりシビアになってきており、ピント微動装置が必須になってきています。
また、大気条件も年々悪くなってきており、20cmの望遠鏡を活かすことはほぼできません。それもあって、120mm程度の高性能屈折望遠鏡が売れていると思います。
接眼レンズは「みるため」のものと「撮影するため」のもので違ってきます。みるためのものならビクセンのLVシリーズは見口も大きく、明るく、視野も広く、とても見やすいです。撮影の場合はタカハシのAbbeやLEシリーズでなければ、カメラアダプターの中に入らないこともあります。
接眼レンズは「みるため」のものと「撮影するため」のもので違ってきます。みるためのものならビクセンのLVシリーズは見口も大きく、明るく、視野も広く、とても見やすいです。撮影の場合はタカハシのAbbeやLEシリーズでなければ、カメラアダプターの中に入らないこともあります。
赤道儀のおすすめはタカハシであれば、PM-1に76mmの屈折または60mmの屈折+星野カメラ、EM-11Temma2Mに100mmの屈折、EM-200Temma2Mに120mmの屈折(130mmも可能だがかなり高い)がマッチするとおもわれますが。EM-200以上になると大人の男でも重いです。EM-11であればなんとかなります。PM-1でもちょっと重く感じます。
ビクセンであれば、最新のSXPまたはSXD。モーターは絶対にステッピングモーターが必須となること、機種によって「自動導入コントローラ:STAR-Book-TEN」がついていないものもあるため要注意です。
三脚もしっかりしたものが必要でこれだけで数万円します。
望遠鏡そのものは買い換える(アップグレード)することがあっても赤道儀は高価でありなかなかアップグレードできないため、最初から、しっかりしたものを購入し、使い慣れておくことが必要だと感じます。真っ暗な中でコントローラーやハンドルを触るにはどうしてもそれらを自分の体の一部にする必要があります。
まずはしっかりした三脚(スリックのカーボマスターかベルボンでも同等のもの)と自由雲台、それにペンタックス一眼+アストロトレーサーでTryをおすすめしてみます。
ほか、KENKO、アメリカのセレストロンやミードなどはコンピュータの導入も早く、使いやすいものも多いと思いますが、自分で使ったことがないため、なんとも言えません。
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